MCP: マイクロチャネルプレートのゲイン
- 定義と機能: MCPは、様々な粒子や放射線(電子、イオン、真空紫外線、X線、ガンマ線)を検出し、検出された信号を増幅する2次元センサーです。この増幅はゲインと呼ばれます。
- ゲインの動作原理:ゲインを得るプロセスでは、MCPの入力側と出力側の間に電圧(VD)を印加することで、チャネルに沿って電位勾配を形成します。入射粒子(電子など)がチャネルに入り、内壁に衝突すると、複数の二次電子が放出されます。これらの二次電子は電位勾配によって加速され、放物線状の軌道を描きながら移動し、チャネル壁に繰り返し衝突して二次電子の放出を引き起こします。このプロセスが継続され、チャネルの出力端に向かって移動する電子の数は指数関数的に増加し、結果として出力側から大量の電子が抽出されます。
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ゲインを決定する要因: MCP のゲインは、主に次の 2 つの要因によって決まります。
- チャネルの長さ(L)とチャネルの直径(d)の比。α(α=L/d)と呼ばれます。
- チャネル壁の材質に固有の二次放出係数。標準的なMCPは、通常40~60の範囲のα値で製造されます。MCPの厚さは、必要なチャネル径とαの設計値によって決まります。
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ゲインと段数:必要なゲインを得るために、アセンブリ内のMCP段数を選択できます。資料には、1段、2段、3段のMCPの典型的なゲイン特性の例が示されており、段数を増やすと一般的に達成可能なゲインが増加することがわかります。
- 1 段 MCP は、供給電圧に応じて約 104 または 105 のゲインを実現できます。
- 2 段 MCP は、供給電圧に応じて約 106 または 107 のゲインを実現できます。
- 3段MCPは、供給電圧に応じて約107または108のゲインを実現できます。特定のモデルにはゲイン値も記載されており、例えばMCPとアバランシェダイオード(AD)を組み合わせたハイブリッド型検出器F14844は、合計106以上のゲインを実現できます。MCPゲインは1~104、ADゲインは1~102、電子衝突ゲインは100~800と規定されています。F2221~F2226アセンブリなどの他のモデルでは、ステージごとに最小ゲインが記載されており、1段の場合は1×104、2段の場合は1×106、3段の場合は1×107となっています。
- ゲイン測定と特性:情報源には、MCPのゲイン特性とパルス高分布(PHD)について言及されています。PHDは、個々の入射粒子から生じる出力パルス振幅の分布に関連し、ゲインの変動を反映します。MCPの抵抗は負の温度特性(温度上昇に伴い抵抗が減少する)を持ち、印加電圧と抵抗値に関連するストリップ電流に影響を与えます。ゲイン特性は、通常、電源電圧にも依存します。
- 動作条件によるゲインへの影響: MCP抵抗を正しく測定するには、MCPを真空状態にする必要があります。MCP表面にガスが吸着し、性能に影響を与える可能性があります。使用前、または保管後には、電圧を供給する前に24時間以上高真空状態にして脱ガスすることをお勧めします。MCPまたはアセンブリに電源を供給する際は、電圧をゆっくりと上昇させてください。抵抗や暗電流などの測定では、動作周囲温度が規定条件となります。動作には真空度が重要で、通常は1.3 x 10-4 Pa未満です。F14844シリーズはより高い圧力(1 Pa以下)でも動作可能ですが、1 Paにおけるゲインは1 x 106と記載されています。
- ゲイン調整:複数の高電圧電源を使用することで、MCPゲインを個別に調整できます。単一の高電圧電源で分圧回路を使用するとコストは低くなりますが、信号出力の変化に応じてMCPゲインが変動します。
要約すると、ゲインとはMCPの基本的な信号増幅能力であり、印加電圧下でチャネル内から二次電子がカスケード放出されることで実現されます。ゲインは、チャネル形状(L/d比)、材料特性、およびアセンブリ内で使用されるMCPの段数によって影響を受けます。印加電圧と真空条件は、適切な動作と規定のゲインレベルを達成する上で非常に重要です。